NHK「光る君へ 第21回 旅立ち」はよかった。特に清少納言には泣かされたね。定子を思い「春はあけぼの……」をしたためる場面。朝方、定子がそれを読む場面。ぐっときたね。
『枕草子』を初めて通読したのは大学入学直後か。その頃は正直ぴんとこなかったのだが、時はバブル景気絶好調の1987年(昭和62年)、満を持してその書物は刊行されたのだった。
題して『桃尻語訳 枕草子』(橋本治)。桃尻……!? 若者はその言葉の響きにすぐに反応した。その冒頭がまた、鼻血が飛び出てしまうほど斬新だった。
「春って曙よ!……」
37年後のいま思えば、歴史的な文脈を全く無視した「バブル期版」の『枕草子』なわけで、とても鑑賞に堪えうるものではなかったのだが、「読み物」としては最高に面白くて、当時はエロい言葉にいちいち胸を躍らせつつ、一気に読み通してしまったのだった。
以来、教壇で『枕草子』を読む度に、この「桃尻語訳」が悲劇的な定子の境遇や華麗な定子サロンのイメージをメチャクチャに破壊するわけで、どんなに古典の世界を純粋に鑑賞しようとしても、バブル期のボディコン衣装を身に纏い、お立ち台の上で華やかな扇子を振りながら踊る愚かしいオネエサンたちが、脳裡に浮かび上がってきてしまうのだった。
若い頃の経験とは、恐ろしいものだ。あれから37年もして、やっと「桃尻」の呪縛から逃れられる時がまさか来ようとはねえ。
